胃がんは日本人の国民病 | 生活習慣病の予防

胃がんは日本人の国民病

 がんには人種差や地域差があります。地域差は、生活習慣の違いでも発生することが知られています。例えばフランスはブルゴーニュ地方の食道がん。ここではアルコール消費量と喫煙が相乗的に作用して食道がんが増加しています。アルコールのなかでも、りんご蒸留酒のカルバドス消費量と良く相関しているようです。あるいはインドの口腔がん。これは噛みタバコが原因です。中国で白菜のつけもの消費量が多い地域での食道がん。つけものの中にアフラトキシンという発ガン物質が生成していることが原因です。
 そして極東アジア(日本、韓国)は胃がんの多発地帯です。日本で胃カメラが開発されたのにもそういった背景がありました。原因は塩分消費量が多いためだと疫学調査から考えられています。日本の中でも東北地方で漬物消費量が多かったために塩分消費量が多く胃がんが多発していましたが、冷蔵庫の普及などで塩分消費量の減少と共に胃がんの発生が減ってきました。しかし、現在でも日本人の平均塩分摂取量は一日12グラム。適正な摂取量は10グラム以下と考えられています。
 日本人の死因の1位はがん、2位・3位が脳卒中・心筋梗塞の動脈硬化による疾患です。がんの最大の危険因子は加齢ですから、死因の一位ががんであること自体は長寿社会の証明であり、先進国ならではといえます。がん死の内訳で1位はながらく胃がんでしたが、近年は肺がんにとって代わられました。胃がんが2位に後退した原因として、相対的に塩分摂取量が減ってきたこと、胃カメラによる早期発見・早期内視鏡治療が普及してきた事が考えられます。治療成績が向上し死因の1位は退いたものの、やはり発生数では1位と考えてよいでしょう。
 そういうわけで、和食の数少ない弱点の一つは塩分摂取量が多すぎることです。私たちは毎日味噌汁を飲みますし、漬物も食べます。しょうゆも大好きです。梅干一個にも塩分が約1g含まれています。普通に食生活を送っているだけで塩分取りすぎになってしまうと意識すべきです。
 結論としては、うす味の和食が世界最強の健康食、といったところでしょうか。