正常血糖糖尿病ケトアシドーシス | 生活習慣病の予防

正常血糖糖尿病ケトアシドーシス

2014年に登場した経口糖尿病薬SGLT2阻害薬は、2型糖尿病に対して当初認可されたが、2018年12月以降一部のSGLT2阻害薬に関しては1型糖尿病にも認可されている。

 

日本糖尿病学会は以下のような注意喚起を行っている(2019年8月6日改訂)。

「2018年12月以降、一部のSGLT2阻害薬が成人1型糖尿病患者におけるインス リン製剤との併用療法として適応を取得したが、ケトアシドーシスのリスク増加が報告 されている。また、海外では、SGLT2阻害薬の成人1型糖尿病への適応申請に対し、 欧州医薬品庁(EMA)ではBMIが27kg/m2以上に限定した承認であり、米食品医薬品局(FDA)では承認が見送られた。こうした事実を重く受け止め、1型糖尿病患者へ の使用に際しては、十分な注意と対策が必要である。」

 

さらに具体的に、1型糖尿病に関しては以下のような推奨をしている。

・1型糖尿病患者の使用には一定のリスクが伴うことを十分に認識すべきであり、使用 する場合は、十分に臨床経験を積んだ専門医の指導のもと、患者自身が適切かつ積極的 にインスリン治療に取り組んでおり、それでも血糖コントロールが不十分な場合にのみ 使用を検討すべきである。

 

・全身倦怠・悪心嘔吐・腹痛などを伴う場合には、血糖値が正常に近くてもケトアシ ドーシス(euglycemic ketoacidosis; 正常血糖ケトアシドーシス)の可能性があるので、 血中ケトン体(即時にできない場合は尿ケトン体)を確認するとともに専門医にコンサ ルテーションすること。特に1型糖尿病患者では、インスリンポンプ使用者やインスリ ンの中止や過度の減量によりケトアシドーシスが増加していることに留意すべきであ る。

 

全文;http://www.fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/recommendation_SGLT2.pdf

 

 過体重の1型糖尿病に、インスリン強化療法ないしインスリンポンプ治療は当然継続したまま、SGLT2阻害薬を併用することは血糖コントロール上有用である。インスリン節約効果もある。しかしながら糖尿病学会の勧告の通り、「正常血糖のまま糖尿病ケトアシドーシス(DKA)になるリスク」に留意が必要。

 実際の副作用報告(2019年12月時点でアステラス製薬が正常血糖糖尿病ケトアシドーシスの症例を1例把握している)を見てみると、体調不良で食事が十分とれない時にインスリンを控え過ぎてしまっているのが一番主要なDKAの発症要因であるようだ。SGLT2阻害薬を内服していると血糖値が上がりにくいので、sick dayにインスリンを控え過ぎになりやすいと考えられる。

結論;1型糖尿病でインスリン療法にSGLT2阻害薬の内服を併用している場合、sick dayにはSGLT2阻害薬の内服を中止すべし。という当然の結論となる。