生活習慣病の予防 -29ページ目
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アミノ酸飲料はダイエットに良いのか

 アミノ酸が連なったものがたんぱく質です。アミノ酸は三大栄養素の一つのはずなのに、どうしてアミノ酸飲料で脂肪が燃えるといった理屈が出てくるのでしょう。
 我々の体は運動するとき、まず炭水化物(グリコーゲン)を燃やします。それが尽きたとき脂肪を燃やし、それすら尽きた飢餓状態に陥って初めて筋肉(たんぱく質)を燃やしてエネルギーとします。
 運動する前にアミノ酸飲料を摂取すると、運動時に血液中にアミノ酸が循環し、「たんぱく質を燃やさないといけない状態か」と体が勘違いし、炭水化物ではなく脂肪を燃焼させる仕組みにスイッチが入る可能性があるかもしれません。あくまでも推測ですが。アミノ酸飲料のブームを作ったのは飲料メーカーの研究員なのでしょうけれども、ぜひ仕掛け人に理屈を確認したいものです。科学的な根拠があれば聞いてみたい。
 いずれにせよ、運動もしないでただアミノ酸飲料を飲めば、栄養になるだけなのは間違いありません。
 

胃がんは日本人の国民病

 がんには人種差や地域差があります。地域差は、生活習慣の違いでも発生することが知られています。例えばフランスはブルゴーニュ地方の食道がん。ここではアルコール消費量と喫煙が相乗的に作用して食道がんが増加しています。アルコールのなかでも、りんご蒸留酒のカルバドス消費量と良く相関しているようです。あるいはインドの口腔がん。これは噛みタバコが原因です。中国で白菜のつけもの消費量が多い地域での食道がん。つけものの中にアフラトキシンという発ガン物質が生成していることが原因です。
 そして極東アジア(日本、韓国)は胃がんの多発地帯です。日本で胃カメラが開発されたのにもそういった背景がありました。原因は塩分消費量が多いためだと疫学調査から考えられています。日本の中でも東北地方で漬物消費量が多かったために塩分消費量が多く胃がんが多発していましたが、冷蔵庫の普及などで塩分消費量の減少と共に胃がんの発生が減ってきました。しかし、現在でも日本人の平均塩分摂取量は一日12グラム。適正な摂取量は10グラム以下と考えられています。
 日本人の死因の1位はがん、2位・3位が脳卒中・心筋梗塞の動脈硬化による疾患です。がんの最大の危険因子は加齢ですから、死因の一位ががんであること自体は長寿社会の証明であり、先進国ならではといえます。がん死の内訳で1位はながらく胃がんでしたが、近年は肺がんにとって代わられました。胃がんが2位に後退した原因として、相対的に塩分摂取量が減ってきたこと、胃カメラによる早期発見・早期内視鏡治療が普及してきた事が考えられます。治療成績が向上し死因の1位は退いたものの、やはり発生数では1位と考えてよいでしょう。
 そういうわけで、和食の数少ない弱点の一つは塩分摂取量が多すぎることです。私たちは毎日味噌汁を飲みますし、漬物も食べます。しょうゆも大好きです。梅干一個にも塩分が約1g含まれています。普通に食生活を送っているだけで塩分取りすぎになってしまうと意識すべきです。
 結論としては、うす味の和食が世界最強の健康食、といったところでしょうか。  

どうして日本人は世界で最長寿なのか

 経済が発展すれば、生活環境が改善し国民の寿命が長くなるのは分かります。日本人の寿命は、経済の発展とともに延びてきました。しかしそれだけでは勿論説明が着きません。どうして日本人はアメリカ人よりも寿命が長いのか。最新の医療もアメリカの方が日本よりも進んでいます。
 恐らく、食事が良い、というのが答えでしょう。和食世界最強説、です。日本人は伝統的に米を中心にした高炭水化物食を食べてきました。三大栄養素は炭水化物(米、パン、いもなど)、たんぱく質(肉、魚、豆腐など)、脂質ですが、和食は大体炭水化物5-6割、たんぱく質2割、脂質2割というバランスを保ってきました。これが良かったのではないか、と考えられます。しかし、最近、日本人の食事の西洋化に伴い、糖尿病、心筋梗塞、大腸がんなどが増えてきました。憂うべき事態です。逆に、アメリカや諸外国で和食に注目が集まってきているという現象も見られます。
 しかし、和食にも弱点はあるようです。次回は、和食の弱点について考察したいと思います。
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