生活習慣病の予防 -3ページ目

新型コロナウイルス関連肺炎

2020年1月31日付の厚生労働省のHPには以下の記載がある。https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09273.html

 

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◆国民の皆様へのメッセージ
 
○ 新型コロナウイルス感染症は、我が国において、現在、流行が認められている状況ではありません。国民の皆様におかれては、風邪や季節性インフルエンザ対策と同様にお一人お一人の咳エチケットや手洗いなどの実施がとても重要です。感染症対策に努めていただくようお願いいたします。

 

○ 武漢市から帰国・入国される方あるいはこれらの方と接触された方におかれましては、咳や発熱等の症状がある場合には、マスクを着用するなどし、事前に保健所へ連絡したうえで、受診していただきますよう、御協力をお願いします。また、医療機関の受診にあっては、武漢市の滞在歴があることまたは武漢市に滞在歴がある方と接触したことを事前に申し出てください。

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また、厚生労働省のHPに「新型コロナウイルスに関するQ&A」が公開されている。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html

 

 

 

 

正常血糖糖尿病ケトアシドーシス

2014年に登場した経口糖尿病薬SGLT2阻害薬は、2型糖尿病に対して当初認可されたが、2018年12月以降一部のSGLT2阻害薬に関しては1型糖尿病にも認可されている。

 

日本糖尿病学会は以下のような注意喚起を行っている(2019年8月6日改訂)。

「2018年12月以降、一部のSGLT2阻害薬が成人1型糖尿病患者におけるインス リン製剤との併用療法として適応を取得したが、ケトアシドーシスのリスク増加が報告 されている。また、海外では、SGLT2阻害薬の成人1型糖尿病への適応申請に対し、 欧州医薬品庁(EMA)ではBMIが27kg/m2以上に限定した承認であり、米食品医薬品局(FDA)では承認が見送られた。こうした事実を重く受け止め、1型糖尿病患者へ の使用に際しては、十分な注意と対策が必要である。」

 

さらに具体的に、1型糖尿病に関しては以下のような推奨をしている。

・1型糖尿病患者の使用には一定のリスクが伴うことを十分に認識すべきであり、使用 する場合は、十分に臨床経験を積んだ専門医の指導のもと、患者自身が適切かつ積極的 にインスリン治療に取り組んでおり、それでも血糖コントロールが不十分な場合にのみ 使用を検討すべきである。

 

・全身倦怠・悪心嘔吐・腹痛などを伴う場合には、血糖値が正常に近くてもケトアシ ドーシス(euglycemic ketoacidosis; 正常血糖ケトアシドーシス)の可能性があるので、 血中ケトン体(即時にできない場合は尿ケトン体)を確認するとともに専門医にコンサ ルテーションすること。特に1型糖尿病患者では、インスリンポンプ使用者やインスリ ンの中止や過度の減量によりケトアシドーシスが増加していることに留意すべきであ る。

 

全文;http://www.fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/recommendation_SGLT2.pdf

 

 過体重の1型糖尿病に、インスリン強化療法ないしインスリンポンプ治療は当然継続したまま、SGLT2阻害薬を併用することは血糖コントロール上有用である。インスリン節約効果もある。しかしながら糖尿病学会の勧告の通り、「正常血糖のまま糖尿病ケトアシドーシス(DKA)になるリスク」に留意が必要。

 実際の副作用報告(2019年12月時点でアステラス製薬が正常血糖糖尿病ケトアシドーシスの症例を1例把握している)を見てみると、体調不良で食事が十分とれない時にインスリンを控え過ぎてしまっているのが一番主要なDKAの発症要因であるようだ。SGLT2阻害薬を内服していると血糖値が上がりにくいので、sick dayにインスリンを控え過ぎになりやすいと考えられる。

結論;1型糖尿病でインスリン療法にSGLT2阻害薬の内服を併用している場合、sick dayにはSGLT2阻害薬の内服を中止すべし。という当然の結論となる。

左心耳閉鎖術

非弁膜症性の心房細動は、カテーテルアブレーション等で洞調律に戻せなければ、一生抗凝固薬を内服し脳梗塞予防をしなければならないことも多い。左心耳閉鎖術という経皮的な治療法を実施すると、抗凝固薬の内服が不要になる。この治療法が保険適応となり、9月から全国18施設で実施が始まる。都内で5施設;東京医科歯科大学、慶応大学、東邦大学大橋医療センター、榊原記念病院、三井記念病院。https://www.laac.jp/treatment/LAAC.html

製薬会社と医師

東大出身の医師、上昌広先生の記事が興味深い。

http://www.fsight.jp/articles/-/43947

 

『2016年度に製薬企業から謝礼金などの形で医師に渡った金は、総額266億円。受け取っていた医師は実に約10万人と、日本の医師全体の約3分の1に上った。

 一部の医師は巨額の支払いを受けていた。年間に100万円以上の支払を受けていたのが約4700人。このうち96人は年間1000万円以上、6人は年間2000万円以上だった。』

とのこと。

 

「巨額な」支払いを受けている国立大学教授たちの給料は、びっくりするほど安い。それは記事の中では触れられていない。なんだか安月給で献身的に働く中央官庁の公務員の天下り問題を思い出す。総合的に問題を評価する必要があるのでは、と私は感じる。上先生の論じ方は極めて正論であることは間違いないのだが。

「臨床研究法」が今年4月1日付で施行される

臨床研究が、法による規制の対象となるようです。

 

詳細は、厚生労働省のHPへ。http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000163417.html

条文長いですね。しかし関係しうる人は、一度は読んでおかないとだめですかね。

 

特に、製薬会社から研究資金の提供を受ける場合と、薬剤の適応外使用をする場合などは「特定臨床研究」として、実施計画書を厚生労働大臣に提出することが義務づけられ、認可が必要となるようです。

日本糖尿病学会2017で面白かった話題③;肝細胞がんと高脂肪食・アシルカルニチン

[東大消化器内科の中川勇人Drらの研究]

マウスに高脂肪食を与え化学発癌させた癌部では、様々な炭素数のアシルカルニチン(AC)が著明に増加してており,それはACをカルニチンとアシルCoAに分解する酵素CPT2の低下によって生じていた.CPT2の低下はβ酸化を抑えてlipotoxicityから回避すると同時に,ACを蓄積させることによってSTAT3活性化を介したstem cell propertyの獲得にも寄与しており,肥満環境下での発癌促進に重要な役割を果たすと考えられた.またNASH-HCC患者は血清AC濃度が有意に上昇しており、ヒトでも大事な可能性。

この発がんメカニズムは、大腸がんでも大事なのではないか。

大腸がんの生活習慣上のリスクは、①高脂肪食②赤身肉の摂取過剰(週500g以上)だ。カルニチンの含有量は、ラム肉>牛肉>豚肉。鶏肉や魚の含有量は少ない。カルニチンの摂取量が多いと、大腸や肝臓でアシルカルニチンが蓄積しやすくなるかどうか、が興味あるところだ。

②日本糖尿病学会2017の面白かった話題;T-カドヘリン

アディポネクチン受容体はAdipo-R1、Adipo-R2が東大の山内敏正らにより同定されているが、非特異的な受容体としてT-カドヘリンが存在し、これが血管内皮細胞に発現しているという。T-カドヘリンに結合したアディポネクチンは細胞内にエンドサイトーシスによって取りこまれ、分解されずにまたエクソサイトーシスによって細胞外に放出されるという。

 

これは、免疫グロプリンと、やはり血管内皮細胞に発現している胎児Fc受容体との関係と同様だ。胎児Fc受容体は、胎盤を介してお母さんから赤ちゃんに免疫グロブリンを渡す役割をはたしており、成人においては免疫グロブリンの半減期延長に役立っている。

 

発表者らは、T-カドヘリンの意義を細胞内セラミドを減少させるメカニズムとして重要と位置付けていたが、そうではなくてアディポネクチンの半減期延長に役立っているのではないか、と思った。

 

なお、今年3月にNature誌に、アディポネクチン受容体(Adipo-R)の構造解析から、受容体自身に低いながらもセラミダーゼ活性があるとフランスのグループから報告されているが、これはどうやら重要ではなさそうだ。

①日本糖尿病学会2017の面白かった話題;プロリン水酸化酵素(PHD)阻害薬

PHDはHIFを不活性化する蛋白で、これを阻害すると体内(肝臓・腎臓)のエリスロポエチン産生を促すため、PHD阻害薬(経口薬)が開発中という。

このPHD阻害薬が乳酸アシドーシスの治療薬にもなるという。

アボット社の新型血糖測定器の成績

まもなく日本でも使える見込みのFlash glucose-monitoring system、もともとコントロールが良い1型(平均HbA1c 6.9%)だと、SMBGに比べてコントロールがさらに改善する訳ではないが、低血糖の時間をSMBG群と比べて1.2時間減らすという(もとが3.4時間/日)。日本では4施設のみ先行使用中とのこと。はやく使いたいものです。

 

文献;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27634581

Novel glucose-sensing technology and hypoglycaemia in type  1 diabetes: a multicentre, non-masked, randomised controlled trial. 

Bolinder J et al. Lancet 2016. Sep 9 (E-pub)

グルカゴンの測定法

群馬大学の北村教授の御講演を拝聴する機会があった。

従来のグルカゴン測定法は、グルカゴンのC末端に対する抗体を用いており、グルカゴン以外のペプチドも測定してしまっているという問題点があった。

一方、北村先生の測定系は、N末端とC末端両者の抗体を用いており、より正確なアッセイが可能。


従来の測定系でグルカゴノーマが疑われる血中レベルだが、精査してもまったく内分泌腫瘍が見つからない場合に、群馬大学に正確なアッセイ系での再測定を依頼した結果、正常範囲と判明したとの症例があるとのこと。


数年前にお伺いした時には、ブドウ糖負荷試験でグルカゴンが正常者でも上昇するという衝撃の結果だったが、やはりそれは誤りだったようだ。その後の検討で、グルカゴンはやはりブドウ糖負荷後は下がるという訂正をお伺いできた。


ただし、食事負荷試験後、特に高蛋白食の場合、グルカゴンは上昇するとのこと。

アミノ酸受容体であるSU受容体はβ細胞だけでなくα細胞にも存在するため、ありうることだ。

では、SU剤でもグルカゴンは上昇しているのか。生理的な意義は分かるようにも思われる。


北村先生のアッセイ系は、厳格すぎてグルカゴンのコンフォメーションが少し変化するだけで測定できなくなっており、過小測定になっていると判明したそうだ。現時点で最も正確な測定系は、Mercodia社のアッセイ系とのことだった。